現代のモノづくりにおいて、製品の小型化や高性能化は急速に進んでいます。その基盤を支えているのが「精密プレス加工」です。本記事では、精密プレスの定義から、一般的なプレス加工との違い、具体的な加工の種類、そして導入するメリットや活用分野について詳しく解説します。
精密プレス加工とは? (定義と概要)
精密プレスの定義
精密プレス加工とは、ミクロン単位(µm)の精度を求められるプレス加工の総称です。一般的なプレス加工と比較して、要求される精度や加工の難易度が格段に高いのが特徴です。
なぜ精密プレスが必要とされるのか?
医療機器や各種センサー、スマートフォンなど、あらゆる分野で製品の小型化・薄肉化への対応が求められています。限られたスペースに高度な機能を実装するためには、極めて微小で高精度な部品が不可欠であり、精密プレス加工の需要が高まっています。
精密プレスと一般的なプレス加工の違い
一般プレスと精密プレスの比較
| 比較項目 | 一般プレス加工 | 精密プレス加工 |
|---|---|---|
| 寸法精度(公差) | ±0.1mm 前後 | ±0.001mm〜±0.01mm(1〜10µm) |
| 要求クリアランス | 標準的なクリアランス | 極小クリアランス(ミクロン単位で設定) |
| 金型素材 | SKD鋼材など一般鋼材 | 超硬合金・特殊鋼材など高硬度材 |
| 対応板厚 | 比較的厚板対応が中心 | 極薄板(0.003mm〜)にも対応可能 |
| バリ・ダレ | 一定程度は許容 | 最小限に抑えるせん断技術が必要 |
| 主な適用分野 | 自動車外装・建材・家電筐体 | 医療機器・半導体部品・精密測定機器部品・スマートフォン内部品 |
| 量産性 | 大量生産向き | 高精度を維持したままの高生産性に対応 |
寸法精度と公差の違い
一般的なプレス加工とは異なり、精密プレスではJIS規格以上の厳しい許容範囲(公差)での加工が求められます。これを実現するためには、金型のパンチとダイの隙間である「最適な極小クリアランス」をミクロン単位で導き出し、極限まで精度を高める技術が必要です。
金型設計が品質を左右する
精密プレスにおいて高精度を実現する鍵は「超精密金型」にあります。プレス機自体の性能はもちろん、金型設計による構造や高精度金型の精度が果たす役割が主となります。
製作する製品の形状が複雑かつ微細なものであれば、当然それを実現する為の金型の構造は複雑になり、設計や製作の難易度は高くなります。
金型製作には、マシニングセンター・放電加工・ワイヤー放電・仕上げ研磨加工などが用いられ、材質も耐食性・耐熱性・耐摩耗性・ショット数などから最適なものが選定されます。高度な金型設計のノウハウこそが、精密プレスの品質を決定づけるのです。
→ JKBの品質管理システムについて詳しく見る:特許取得の生産性向上支援システム・品質管理システム・金型メンテナンスシステム
使用される材料と設備
加工の難易度が高い薄板加工(板厚3µm〜)や、インコネル・クラッド材・アモルファス合金などの特殊材への対応が求められることも多く、高精度金型の性能と合わせて材料特性を熟知した加工技術が問われます。
精密プレス加工の主な種類と技術
● 金型の種類
順送プレス加工
複数の加工工程を一つの金型内に配置し、コイル状の材料を連続して送りながらプレスしていく加工方法です。1ストロークで打ち抜き・曲げ・絞りなどを同時進行できるため、工程間の位置ずれが最小化されます。また連続加工によるタクトタイムの短縮とコストダウンも実現でき、高品質を維持した大量生産に最も適した工法です。
→ 順送プレスの加工実績を見る:加工技術紹介 – 精密プレス加工 技術紹介
単発プレス加工
一つの金型に一つの加工工程のみ配置しプレスする加工方法です。金型の構造は単純ですが、一つの製品を製作するためには複数の金型が必要になるため、生産性が低く、コストが高くなります。
JKBでは金型設計・製作の難易度は高くても、高生産性かつ高品質を実現出来る順送プレス加工を採用しています。
● 加工の種類
抜き加工
精密な抜き加工では、バリやダレを最小限に抑える高度なせん断技術が用いられます。JKBでは、プレス打ち抜き加工にて切削加工レベルの高精度な面粗度に仕上げることを実現しており、切削加工からの工法転換にも多数実績があります。
また、1mmの範囲内でミクロン単位の高精度抜き加工も実現しています。
→ 工法転換の課題解決事例を見る:課題解決事例 – 低コスト化
曲げ加工(精密曲げ)
微細な曲げ加工においても、精緻な計算に基づいた高精度な成形が行われます。例えば、4回の曲げ加工を経ても平行度0.1mm以下を確保するなど、積み上げ誤差が生じやすい複合曲げにも対応しています。
また、専門誌にも取り上げられた板厚5μm材の高精度抜き曲げ加工の実績もあり、箔材の高精度加工も可能です。
素材ごとに異なるスプリングバックの特性を考慮したうえで、最適な金型による加工を行っています。
→ 高精度曲げ加工の実績を見る:加工技術紹介 – 難加工形状
絞り加工(精密絞り)
一枚の金属板から継ぎ目のない立体形状を作り出す技術です。JKBでは、一般的な絞りに留まらず、他社が敬遠するような「難しい絞り加工」を強みとしています。
具体的には、以下のような高難易度の要求にお応えします。
- メッシュ材の精密絞り(板厚0.2mm・穴径0.2mm・桟幅0.1mmの微細メッシュを破断なく絞り加工)
- ミクロン代の絞り(公差±10µm以内での高精度成形)
- インコネル等の難加工材への絞り加工
→ 絞り加工の実績を詳しく見る:丸め・絞り加工の技術事例
精密プレス加工を導入するメリット
コスト削減(他工法からの転換)
これまで切削加工・エッチング加工・研削加工・レーザー加工といった他の工法で製造していた部品を精密プレス加工に転換することで、大幅なコスト削減が期待できます。
JKBの実績では、研削加工と比較してコストを1/1,000以下に抑えた事例や、エッチング加工から転換して1/10のコストを実現した事例など、多くの実績があります。
品質の安定化と高生産性
高精度な金型を使用することで、長期間にわたり均質で安定した品質での製品供給が可能になります。JKBでは自社設計・特許取得の「品質管理システム」を活用し、過去の品質情報をデータベース化して不良を未然に防ぐシステムによる生産で、社内不良率をゼロに近づけています。
単なる大量生産ではなく、「高品質を維持」したまま効率よく生産する「高生産性」を実現できるのが大きなメリットです。
複雑形状・難加工形状への対応
微細な部品や立体的な形状への対応力が高く、設計の自由度を広げることができます。
JKBでは、全国の中小企業(製造業)約44万社の中から、「元気なモノ作り中小企業300社」(経済産業省)に選定され、難加工形状品のプレス加工技術や超精密微細加工技術、ITによる高精度プレス加工技術、生産技術が評価されており、他社では対応困難な形状にも挑戦しています。
精密プレス加工が活用される主要分野
医療機器
カテーテルや内視鏡等に用いられる微小な低侵襲治療器具のほか、以下のような精密部品の製造に不可欠な技術です。
- 針先形状部品(全周シャープエッジ:旋盤加工では1,000個中2〜3個しか良品が取れなかった形状をプレスで量産化し、医療機器の実用化に貢献)
- 医療用クリップ(板厚0.06mm、公差±10µm)
- 医療機器関節部品(真円度0.1mm以下の円筒形内部加工)
→ 医療機器分野の製品例を見る:用途別製品例 – 医療機器
電子機器・半導体
スマートフォンの内部部品や半導体製造装置など、小型化と高い信頼性が求められる部品に広く活用されています。
- リング・スペーサー(平坦度10µm加工により後工程の研磨工程を削減)
- アンテナコア(コバルト系アモルファス合金0.023mmをレーザー溶接で20枚積層固着、特許取得)
- クラッド材端子(SUS+銅クラッド材の高精度抜き曲げ加工)
- 金属キャップ・金属ケース(絞り側面〜底面のスリット高精度成形)
→ 電子機器分野の製品例を見る:用途別製品例 – 電子機器
研究開発・産業機器
大学・研究機関との連携実績もあり、試作段階からのご相談にも対応しています。
- マイクロデバイス(幅0.2mm・平坦度10µ)
- 精密フィルター(1円硬貨の1/6の範囲内に121個の穴を穴ピッチ公差3µm以下で加工)
- 熱交換器用オフセットフィン(日本初の量産化)
→ 研究開発・産業機器の製品例を見る:用途別製品例
まとめ:精密プレス加工の可能性とJKBの強み
精密プレス加工は、ミクロン単位の精度が求められる現代のモノづくりにおいて、電子機器・医療機器・研究開発など幅広い分野の小型化・高性能化を支える不可欠な技術です。
品質を左右するのはプレス機の性能以上に、金型設計の構造と高精度な金型そのものが果たす役割です。JKBでは、長年培った高度な設計ノウハウにより複雑な形状の加工を実現する「金型構造」や「最適な極小クリアランス」を導き出し、他社が敬遠するような「ミクロン代の絞り」などの難加工に対応しています。更に、世界最高精度の工作機械を設備して使いこなす事で、最高レベルの技術を実現しています。
また、従来は切削加工・エッチング加工・研削加工・レーザー加工などに頼っていた部品を精密プレス加工へ転換することで、品質を安定させたまま大幅なコスト削減と高生産を同時に実現することが可能です。
JKBでは、精密プレス加工を、自社設計・特許取得の3つのITシステム「生産性向上支援システム」「品質管理システム」「金型メンテナンスシステム」を活用して、最先端のものづくりを行っています。
さらに、経済産業省による「明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」に全国44万社の中から選定(中小企業部門150社のうちの1社)され、「IT経営実践企業」(経済産業省認定)、「川崎ものづくりブランド」(川崎市認定) といった外部評価も獲得し、国のスマートファクトリーを推進するためのモデルケースにもなりました。
最先端開発に必須となる知財管理についても、JKBの「知的財産管理システム」は、自社のみでなく顧客のノウハウも高度な管理を行っている事が、国や顧客からも高く評価されています。
微小で精密な部品の製造や、コストダウンに向けた工法転換でお悩みの場合は、ぜひ一度JKBへご相談ください。開発段階からのご提案で、お客様の課題解決や開発期間の短縮に貢献します。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 精密プレス加工と切削加工・エッチング加工はどう違いますか?
A. 切削加工は材料を削り取って形状を作るため、1個あたりの加工時間が長くなります。エッチング加工は薬液で素材を溶かすため、精度のバラツキが生じやすく廃液処理コストも発生します。精密プレス加工は高精度な金型を一度製作してしまえば、同等以上の精度を保ちながら連続・高速に量産できるため、中〜大ロット生産では大幅なコスト削減が可能です。JKBでは、エッチング加工からプレスへの工法転換でコスト1/10を実現した実績があります。
Q2. 試作品だけの小ロットでも対応してもらえますか?
A. はい、対応しています。JKBでは「量産を見据えた試作」にこだわり、試作から量産まで一貫して社内で対応しています。試作段階でプレス加工を採用することで、量産立ち上げ時の課題を事前に解決でき、スムーズな量産化・実用化が可能です。研究開発用の少量試作から量産まで、ロットの大小を問わずご相談ください。
Q3. どのような材料・板厚まで対応できますか?
A. JKBでは、板厚3µm(0.003mm)からの極薄材加工に対応しています。材質についても、ステンレス・真鍮・ベリリウム銅・リン青銅・アルミニウムなどの一般金属材料はもちろん、インコネル(耐熱合金)・アモルファス合金・クラッド材(SUS+銅)・PET樹脂など、他社が敬遠するような特殊材・難加工材にも対応実績があります。新たな素材についても加工検証から手掛けております。加工可否については、まずはお気軽にお問い合わせください。
